新しい手技ができた。メニューにはしなかった
お腹と下腿に鍼をする手順を、施術に組み込むことにしました。院内では「お腹の鍼」と呼んでいます。
最初に考えたのは、単品のメニューにすることでした。「お腹の鍼 30分 ◯◯円」。料金表に1行足すだけです。
やめました。
料金表には載せません。既存のコースの中で、必要なときだけ入れます。料金も変えません。
この記事は、その判断の記録です。結果はまだ出ていません。始める前に何を考えたかを、先に残しておきます。
単品メニューにすると起きる2つのこと
1. 短い枠が生まれる
単品にすると、だいたい30分か45分の枠になります。
片付け・準備・カルテ・予約の調整は、枠の長さに関係なくほぼ一定でかかります。枠が短いほど、この時間の比率が上がる。短い枠は、時間単価がいちばん下がる枠です。
新しい手技を足したつもりが、いちばん残らない枠を自分で作ることになります。
2. 効くと言わないと売れなくなる
ここがいちばん大きい理由です。
単品で売るなら、何のための鍼かを料金表に書くことになります。胃腸に、自律神経に、呼吸に。書いた瞬間、それは効果の約束です。医療広告の線を、自分から踏みにいくことになる。
コースの中の手順なら、約束は要りません。施術者が所見を見て、入れるか入れないかを決めるだけです。説明は、施術中にお腹を触りながらすれば足ります。
どこに入れたか
当院の90分・120分のコースの中です。毎回入れるわけではありません。次のような所見があるときだけです。
- 押すと、板のように硬く返ってくる
- 呼吸に合わせてお腹が動かない、動きが小さい
- 肋骨の下に指が入っていかない
- 左右で硬さが違う
- 押したときに、息を止める
時間は、その日の施術の中で調整します。お腹と下腿を入れる日は、ほかの部位の配分を見直す。枠そのものは延ばしません。
ここを決めずに足すと、枠が延びるか、手順が雑になるかのどちらかです。先に「枠は延ばさない」と決めておくと、どこを減らすかを毎回考えることになります。それでいいと思っています。
手技の中身(同業者向けに短く)
刺すのは4か所です。
| 部位 | 主な場所 |
|---|---|
| 肋骨下縁 | 不容・期門・日月のあたり、硬いところ |
| 横腹 | 帯脈・章門のあたり |
| 腹部 | 任脈ライン(上脘・中脘・下脘・気海など)と、その両側の硬いところ |
| 下腿 | 肝経・胃経・脾経・腎経(足三里・三陰交・陰陵泉・蠡溝・復溜など) |
- 短く細い鍼で、どこも浅め。お腹は内臓があるので深くは入れません
- 基本は置鍼。状態によって単刺に切り替えます
- 肋骨の上(肋間)には刺しません。肋骨の下から、腹壁に沿う向きで入れます
- 下腿は、硬さや張りがとれればそれでいい
下腿を一緒にやる理由は単純です。足の三陰経と胃経は、どれもお腹へ上がってくる。お腹を直接ゆるめて、同じ流れの遠い端からも追う、という組み立てです。
お腹がやわらかくなると、呼吸と全身の動きが変わってくる。そう考えて組み込んでいます。感じ方や変化には個人差があります。
入れない方
- 妊娠中の方(お腹と三陰交)
- お腹の手術を受けてまもない方
- 急な腹痛がある方
- 抗凝固薬を服用中の方
まだ結果は出ていない。何を見て判断するか
始めたばかりなので、数字はありません。うまくいくかどうかも分かりません。
見るものは、先に決めておきます。
- 客単価:料金を変えていないので、動かないはず。動いたら、選ばれるコースが変わったということ
- 1回の実際の施術時間:枠を超えていないか
- 次回予約:お腹の鍼を入れた回と、入れなかった回で差があるか
3ヶ月たったら、この記事に追記します。うまくいかなかったら、それも書きます。
足す前に、どこに入れるかを決める
新しい手技を覚えると、売りたくなります。料金表に載せたくなる。
でも、ひとりでやっている院で、枠を増やす方向にはすぐ天井が来ます。足すなら、まず「どこに入れるか」を決める。単品にするのは、そのあとでいい。
当院の数字の見方は、こちらにまとめています。
よくある質問
新しい手技を単品メニューにしてはいけないのですか。
いけないわけではありません。ただ、ひとりでやっている院では、単品にすると短い枠が生まれることと、料金表で効果を約束することになる点を、先に考えておく必要があります。その2つを引き受けられるなら、単品にする選択もあると思います。
料金を変えずに手順を足すと、損になりませんか。
枠を延ばさないと決めていれば、時間単価は変わりません。そのかわり、その日はほかの部位の配分を見直します。延ばし始めると時間単価が下がるので、そこだけは崩さないようにしています。
お腹に鍼をするとき、何に気をつけていますか。
短く細い鍼で、どこも浅めにしています。肋骨の上には刺さず、肋骨の下から腹壁に沿う向きで入れます。妊娠中の方、お腹の手術を受けてまもない方、急な腹痛がある方、抗凝固薬を服用中の方には入れません。
結果はいつ分かりますか。
3ヶ月を目安に、客単価・1回の実際の施術時間・次回予約の3つを見て、この記事に追記します。うまくいかなかった場合も、そのまま書きます。

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