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一人治療院、まず見るべき数字は4つだけでいい

目次

見る数字が多いほど、見なくなる

経営の数字が苦手だ、という同業の方は多いと思います。

ただ、苦手というより、見ようとしている数字が多すぎるのではないでしょうか。会計ソフトを開けば勘定科目が何十行も並び、予約システムには稼働率もキャンセル率も出ています。SNSを開けばインプレッションとフォロワー数がある。全部見ようとすると、結局どれも見なくなります。

一人でやっている院に、経理担当も分析担当もいません。施術の合間と、閉院後の頭で見るしかない。だとすれば、数字は絞らないと続きません。そして続かない数字は、無いのと同じです。

この記事では、見る数字を4つに絞る話と、その数字が下がったときにどこから疑うかを書きます。

一人治療院が見る数字は4つでいい

毎月見るのは、この4つで足ります。

  1. 売上(その月に入ったお金)
  2. 客数(その月に来られた延べ人数)
  3. 客単価(売上 ÷ 客数)
  4. リピート率(前月来られた方のうち、今月も来られた方の割合)

なぜこの4つかというと、この4つだけで売上の増減を分解できるからです。逆に言えば、分解できない数字は増やしても判断が増えません。

売上は、客数 × 客単価に分けられます。だから売上が落ちたとき、原因は「人が減った」か「一人あたりの単価が下がった」か、その両方かのどれかしかありません。ここで2つに割れます。

客数は、さらに「新しく来られた方」と「続けて来られている方」に分かれます。ここを見るのがリピート率です。新患が減っているのか、来ていた方が離れているのか——この二つは、打つ手がまったく違います。

一人院の場合、この分解ができるかどうかが、次の一手を間違えないかどうかを決めます。

売上が落ちたから広告を出す、という判断は、原因が新患減だったときにだけ正解です。原因がリピート減なら、広告費は穴の空いたバケツに水を足す行為になります。しかも一人院では、その広告で新患が増えたぶん、離れている理由に手を打つ時間がさらに減ります。二重に効きます。

出し方は、月に一度・紙一枚で足りる

道具は要りません。月初に前月分を、この順で出します。

1. 売上

その月に入金された額。売掛や未収があるなら、「入金ベース」か「施術ベース」か自分で決めて、毎月同じ方で数えます。途中で数え方を変えないこと。これさえ守れば、定義が多少雑でも月ごとの比較には使えます。

2. 客数

予約台帳やカルテを数えるだけです。同じ方が月に4回来られていれば4。延べ人数で数えます。

3. 客単価

売上 ÷ 客数。それだけです。

4. リピート率

前月来られた方のうち、今月も来られた方が何人か。前月の人数で割ります。ここだけは延べではなく実人数です。

大事なのは精度ではなく、同じ数え方で並べ続けることです。定義がズレていても、12ヶ月並べれば波は見えます。逆に、正確を期そうとして3ヶ月で挫折した表は、何も教えてくれません。

数字が下がったとき、どこから疑うか

売上が落ちた月に、すぐ集客の手を打つのは早い。この順に見ます。

パターン1:客数が減り、単価は変わらない

人が減っています。ここでリピート率を見ます。リピート率が保たれたまま客数だけ減っているなら、新患の入口の問題です。紹介が細ったのか、検索からの流入が落ちたのか、季節要因か。ここで初めて集客の話になります。

パターン2:リピート率が落ちている

続けて来られていた方が離れています。これは集客では埋まりません。施術の内容、次回の提案の仕方、間隔の空き方——そして、院長自身の状態。一人院では、この数字は自分のコンディションも映します。忙しさのピークの翌月に落ちていないか、並べてみると分かります。

パターン3:客数は変わらず、単価が落ちている

メニューの構成が動いています。短い枠に流れているのか、継続の提案が止まっているのか。ここは値付けの話につながるので、別の記事に譲ります。

3つとも落ちているとき

これは原因の分類ではなく、状態です。一人院で全部が同時に落ちるときは、たいてい院長の側に理由があります。数字を分析するより先に、休むほうが早い。

なお、一人院は月単位で数字が跳ねます。前月比よりも、前年同月比のほうが読みやすい。去年の同じ月と比べて上か下か。これが一番静かな指標です。

見なくていい数字

逆に、判断のために見なくていい数字も書いておきます。

他院の相場

知っておくのは構いません。ただ、相場を見て自分の値付けを決めるのはやめたほうがいい。自分の原価も、稼働できる枠の数も、通われている方の層も違うからです。相場は、決めた後で「そういえば周りはこうか」と確かめる程度で足ります。

業界全体の平均値

全国の施術所は、令和6年末時点で合計145,280カ所です(厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」表6の5区分を合計した数。柔道整復を含みます)。母数として知っておくのは悪くありませんが、この平均が自分の院の指標になることはありません。

SNSのフォロワー数とインプレッション

増えて悪いことはありませんが、4つの数字のどれとも直接つながっていません。つながるのは新患数を見たときだけです。フォロワーが増えて新患が増えていないなら、その努力は別のところで報われている、というだけの話です。

数字は「やらないこと」を決めるために見る

数字を見る目的は、増やすことよりも、やらないことを決めることにあります。

一人でやっていると、やれることは無限にあります。チラシ、SNS、ホームページの手直し、新しい技術の習得、メニューの追加。全部やろうとして、全部が中途半端になる。

4つの数字を並べておくと、「今月の問題はリピートだ」と分かります。分かれば、今月は集客に手を出さないと決められる。手を出さない判断ができることが、数字を持っている人の強みです。

最初の月は、出した数字を見ても何も分からないと思います。3ヶ月で波が見え、12ヶ月で自分の院の形が見えます。その形が見えてから打つ手は、勘で打つ手よりずっと外れません。

まずは前月の4つを、紙一枚に書き出すところからで足ります。

よくある質問

会計ソフトにも予約システムにも数字は出ています。それでは足りませんか。

足りないのではなく、多すぎます。出ている数字のうち、売上の増減を分解できるのは4つだけです。残りは判断を増やさないまま時間を取っていきます。

リピート率は延べ人数と実人数、どちらで数えますか。

実人数です。売上・客数・客単価は延べで数えますが、リピート率だけは「前月に来られた実人数のうち、今月も来られた実人数」で出します。ここを延べで数えると、通院回数の多い方の影響で率が跳ね上がります。

患者さんの数が少ない月は、率が大きく動いてしまいます。

一人院では避けられません。だからこそ単月で判断せず、前年同月比と12ヶ月の並びで見ます。1ヶ月の上下は読まない、と決めておくほうが誤った手を打たずに済みます。

売掛や未収があるとき、売上はどう数えますか。

入金ベースか施術ベースか、どちらかに決めて毎月同じ方で数えてください。どちらが正しいということはありません。途中で数え方を変えると、比較ができなくなります。

3ヶ月続けましたが、何も見えてきません。

3ヶ月では波の一部しか出ません。季節の影響が一巡する12ヶ月を目安にしてください。その間、判断材料が増えないと感じても、記録そのものが後で効いてきます。

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