序章:あなたはなぜ、ひとりでやっているのか?
開業当初、資金も人手も足りないから「仕方なく」ひとり治療院を選んだ方もいるかもしれません。あるいは、自由を求めて、自分の腕だけでやっていく道を選んだ方もいるでしょう。
しかし、時が経つにつれ、こう思い始める方も多いのではないでしょうか?
「これから先も、ひとりでやっていけるのか?」
「もう一人雇った方がいいのではないか?」
「そろそろ拡大すべきだろうか?」
その迷いこそが、最大の「盲点」であり、同時にメタ認知の入り口です。
・ひとり治療院の“明確な強み”とは何か?
ひとり治療院には、以下の5つの圧倒的な強みがあります。
① 顧客との信頼が直通する
患者さんは「人につく」もの。ひとり治療院では、施術者=経営者=責任者であるため、信頼がダイレクトに蓄積します。これは拡大路線のチェーン店にはない、最強のブランディング要素です。
② 情報の一貫性
カルテ、問診、評価、施術、アフターケアまでをすべてひとりで把握しているからこそ、施術のブレがありません。複数人での情報伝達ミスによるリスクを極限まで回避できます。
③ 経営判断が即断即決
スタッフ会議も稟議書も不要。気づいたその瞬間に改善できる。これはひとり院長にしか許されないスピード経営です。
④ 収支構造がシンプル
人件費や教育コストに悩まされることなく、固定費を最小限に抑えた利益体質を築けます。売上=施術力。数字が素直に実力を映す鏡となります。
⑤ 経営と人生が直結する
ひとり治療院の経営は、そのまま“自分の人生の質”を映す鏡です。何を求め、何を大切にしているかが、治療院の空気感や雰囲気に直結するのです。
・なぜ「拡大したくなる」のか?──欲望の構造と裏切り
ここで、一歩引いてメタ認知してみましょう。
多くの治療家がひとり治療院で軌道に乗ったあと、次のような拡大衝動に駆られます。
- 人を雇えば、売上が倍になるのでは?
- 多店舗展開で地域一番を目指したい
- もっと稼げばもっと自由になれる
しかし、その多くが「裏切られたような感覚」に陥ります。なぜか?
それは、拡大の本質が「自己承認欲求」の充足に過ぎないからです。
- 「すごいね」と言われたい
- 「人を従える側」に立ちたい
- 「お金を持つ人」になりたい
けれど、その果てにはこんな現実が待っていることもあります:
- 信頼していたスタッフに辞められる
- 患者さんの満足度が下がる
- 家庭の時間を失い、育児に参加できなかった記憶
- 収入はあっても心は空っぽ──車やブランドに慰めを求める日々
・成長とは「外」に広げることではなく、「内」を深めること
ここで問い直したいのです。成長とは何か?幸せとは何か?
本質的な問いに立ち返ると、拡大よりも重要な問いが浮かび上がってきます。
● どこまで“持たない”で済むか?
→ 持ち物、肩書、収入に執着せず、「少ないもので満足できる力」を鍛えること。
● 感情を選べるか?
→ 達成感よりも、安堵感・平穏・幸福感を自分で選び、育てられるか。
● 幸せのハードルを下げられるか?
→ 「笑顔が見れた」「今日も施術できた」それだけで十分満たされる日々へ。
● 人生は究極の暇つぶし
→ 本来、人生に意味もゴールもありません。だったら、楽しく穏やかに、自分と他人に「いい暇つぶし」を提供できればそれで充分。
・「与える喜び」こそ、最も持続する幸福
最後にもう一つ──
拡大や拡張は、「所有」「達成」につながります。しかし、それは達成した瞬間に喜びが終わってしまうもの。
一方、「与える喜び」には終わりがありません。今日、目の前の患者さんに、丁寧に心を込めて施術する。
その積み重ねこそが、静かで確かな幸福を生み出してくれます。
・結局、ひとり治療院こそ「最強」なのではないか?
多店舗展開を否定するつもりはありません。ただ、もし今、あなたがひとりで治療院を営んでいるのなら――
あなたが持っているのは「劣った形」ではなく、最も自由で、最も濃密な治療院経営の在り方です。
むしろ、「時代の先端」にいるのです。
だからこそ、今の働き方に誇りを持ち、より深く、より丁寧に生きていきませんか?
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