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【治療院の多角化経営の栄光と挫折】

― 成功の先にある「静かな幸福」とは何か?ー


目次

■ その拡大、本当に「人生の夢」だったのか?

治療院経営が軌道に乗り始めたとき、自然と湧き上がる思いがあります。 「この勢いを止めたくない」「もっと多くの人を救いたい」 「1人では限界がある、人を雇って2号店を出そう」

当時、雇われ社長だった私は、13店舗まで展開し、年商3億5千万円、車はアルファードとランクル。 数字だけを見れば”成功”と呼べたかもしれません。

しかし、心は空虚でした。 生まれたばかりの長男の育児に参加した記憶はなく、家に帰るのは午前1時過ぎ。 治療院を大きくしたはずが、自分の人生はどんどん小さくなっていたのです。


「拡大衝動」の正体

治療院が忙しくなると、まず「自分ではこなせない」という現実が訪れます。 ここで多くの院長は、「仕組み化」や「店舗展開」に意識を向けます。

一見、前向きな選択に思えますが、そこに潜んでいたのは、 ・もっと評価されたい ・自分が楽になりたい ・凄いと思われたい といった、静かで強い”承認欲求”でした。

それは夢ではなく、”自己の不安”や”限界からの逃避”であることも少なくありません。


クライアントにとって「多店舗化」は無関係

クライアントが求めているのは、規模でも仕組みでもありません。 ただ「信頼できる施術者が、自分の症状を真剣に診てくれること」。

店舗数が増えても、施術の質が下がれば意味がない。 実際に私も、患者からこう言われました。 「B先生はなんだか合わなかった」「A先生はよかったのに」

施術の信頼性が、拡大によって徐々に崩れていく。これは大きな代償です。


拡大がもたらす“見えないコスト”

1. 施術の一貫性が崩れる

施術の質にばらつきが出ると、信頼が揺らぎます。

2. 経営の“心”が数字に支配される

「黒字店舗で赤字店舗を補填する」 「スタッフの給与や離職対策で追われる」 といったサイクルに陥ります。

3. 院長の役割が“施術家”から“管理者”へ

スタッフ対応、労務、教育…。施術に集中できず、日々”火消し”に追われます。


育成の壁と、自分の分裂

施術家を育てるには、最低でも3年。 ・技術 ・知識 ・人間性 ・対話力 この全てを兼ね備えるには、院長自身の倍のエネルギーが必要です。

「自分のクローンがほしい」 そう思っても、それは叶いません。

次第に、現場に出たい自分と、管理者としての自分がぶつかり合い、 “魂が引き裂かれるような感覚”に陥っていきました。


崩れゆく「関係性」

拡大と共に起こるのは、“裏切られる経験”の連続です。 ・離職でスタッフに ・クレームで患者に ・不在で家族に ・疲弊で自分自身に

拡大とは、想定外の“すれ違い”を生む構造そのものだったのです。


メタ認知で問う「それ、本当に必要か?」

ここで一度、立ち止まって問い直します。 ・自分が拡大したい理由は何か? ・誰のための多店舗化か? ・それで本当に“今の幸せ”を守れるのか?

この問いは、未来の自分からのメッセージかもしれません。


■ 原点回帰と、“新しい豊かさ”

現在、私は1人で治療院を運営しています。 売上は、当時より落ち着いています。 でも、 ・家族との夕食がある ・施術に100%集中できる ・学びや成長が、自分のペースでできる ・心が擦り減らない

これこそが、私が本当に求めていた「豊かさ」だったのです。


■ 「与える喜び」には終わりがない

拡大とは、自己の「承認欲求の延長線」であることが多い。 そして、その道には“終わり”があります。

でも、「与える喜び」には終わりがありません。 ・患者に安心を渡す ・言葉で希望を与える ・家族に存在を返す

これは、誰にも奪えない“成熟した治療家の在り方”です。

人生は「究極の暇つぶし」かもしれない。 ならば、与えて与えて与え続けることが、 最も幸福で、最も意味のある時間の使い方なのではないでしょうか。


■ 結びに:院長の人生のピークは、どこにありますか?

成功とは「外から見た点」。 成熟とは「内から積み上げる線」。

今、もう一度考えてください。 あなたは拡大の中に、「何を本当に得たい」と思っているのか?

あなたの人生のピークが、「与える喜びの中に永遠に続く場所」であることを願ってやみません。

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