― 技術でも立地でもない。「崩壊は、無意識から始まる。」
■ 序章:廃業は、音を立てずにやってくる
廃業は、突然の“事件”として起こるのではありません。
それは、日々の判断ミスと行動停止が、“静かに積み上がる”現象です。
そして怖いのは、それが「自覚なし」に起きるということ。
「おかしいな、患者が減ってる」
「なんだか最近、疲れが取れない」
「やる気が湧かない。でもまあ、こんなもんか」
そう思っている今が、すでに**“崩壊の坂道”を下り始めている可能性**があるのです。
■ 今回の目的
本記事では、以下の3点を明確にします。
- 廃業に向かう治療院に共通する「7つの無自覚な兆候」
- なぜ、それを自分で見抜けないのか(=メタ認知の欠如)
- それぞれの兆候に対する、構造的かつ行動可能な逆転策
【構造フレーム】
7 Predictive Signs × メタ認知トリガー × 脱却アクション
❶「日報・カルテ」が“ただの記録”になっている
▶ 兆候
- ルーティンでカルテを書く
- 自分の記録を“患者の変化”ではなく“事実の羅列”として扱っている
▶ メタ認知トリガー
「今週で、患者がどう変化したか? それにどう貢献したか?」
…この質問に即答できなければ、施術が“作業”に堕ちている可能性がある。
▶ 脱却アクション
- カルテ欄に「未来予測」の項目を追加(例:3回後に〇〇が改善予定)
- 自分用に“ビフォー/アフター感情メモ”を設け、施術の“価値”を言語化
❷ 問診中の「患者の目」が、笑っていない
▶ 兆候
- 話をうなずいて聞いているが、表情が乏しい
- 問診が滑らかすぎて“共感の熱”が感じられない
▶ メタ認知トリガー
「最後に“心が震えるほど患者に共感した瞬間”はいつだったか?」
技術がある人ほど、「反応のよい会話」だけで満足してしまう。
でも、患者は“心で感じた共感”にこそ価値を感じる。
▶ 脱却アクション
- 毎回問診に「今日の来院動機(感情面)」を聞くルールを追加
- 最後に必ず「〇〇さんのその気持ち、すごく分かります」と“共感の言語化”を入れる
❸ 売上が下がっても、「打つ手がない」と思っている
▶ 兆候
- 月商の減少を「世の中のせい」「時期のせい」にしてしまう
- どこから手をつければいいか、頭が止まっている
▶ メタ認知トリガー
「“売上=信頼の総量”だとしたら、どこで信頼を落としたのか?」
売上の低下は“社会からのフィードバック”である。
「私のどこが、今の患者に合っていないのか?」という視点こそ再起の鍵。
▶ 脱却アクション
- 3ヶ月間の失注リストを出し、理由を仮説で書き出す
- SNSまたはブログで“再信頼構築”のテーマをシリーズ化する(例:「卒業した患者が戻ってきた理由」)
❹ 新しい知識・技術を入れても“燃えない”
▶ 兆候
- セミナーに行っても「すぐに使えないな」で終わる
- 情報は増えても、“臨床に落ちない”
▶ メタ認知トリガー
「なぜ、学びが“血肉”にならないのか?」
答えはシンプル。**“感情が動いていないから”**である。
あなたがワクワクして学んだものしか、患者の前では使えない。
▶ 脱却アクション
- 「感情が動いた瞬間」をセミナー受講中に必ず1つメモする
- 院内研修やYouTubeで、アウトプット前提で学ぶように設計
❺「声かけ」や「次回予約」が“惰性”になっている
▶ 兆候
- 次回予約を促す言葉がテンプレ化している
- キャンセル後のフォロー連絡をためらうようになっている
▶ メタ認知トリガー
「患者が“通うかどうか”を決める瞬間は、いつか?」
正解は「施術の直後」である。
このとき、あなたの言葉に“熱”がなければ、予約率は下がっていく。
▶ 脱却アクション
- 施術直後に「今のお体、どんな感じですか?」→共感→未来の改善図を描く
- 次回予約の理由は、「患者が語った理想の状態」に紐づける
❻ LINEや発信が“売り込み”に聞こえていないか?
▶ 兆候
- 定期的にLINE配信しているのに反応が悪い
- 開封率・クリック率を把握していない
▶ メタ認知トリガー
「この発信、“私に向けられてる感”があるだろうか?」
あなたが出す文章には、“個”が感じられているか。
患者は情報よりも「〇〇先生、私のことを覚えてる」と感じたときに反応する。
▶ 脱却アクション
- 名前入りor来院履歴に言及した内容を必ず1文入れる
- 内容は「役に立つこと」より「自分にしか書けないこと」に重点を置く
❼「また来ますね」と言った患者が、もう二度と来ない
▶ 兆候
- 初診で良い反応だったのに、次回来ない
- 紹介も、ある時期からピタリと止まった
▶ メタ認知トリガー
「“来ない理由”を、患者の立場で5つ挙げられるか?」
実は、来ないのは“症状のせい”ではない。
多くは「不安」「未納得」「面倒」「未来像の不明瞭さ」など感情の断絶が原因。
▶ 脱却アクション
- 初回終了時に「不安なことがあれば、いつでもLINEください」と伝える
- 説明は「何をするか」ではなく、「どう変化していくか」の“過程と物語”を描く
■ 終章:「兆候に気づいた者」が、院を変えることができる
治療家は技術職であると同時に、“感情と信頼”を扱う職人です。
あなたが感じている違和感――
それが「兆候」です。
✅ 7つの予兆 再チェックリスト(Yes/No)
No | 予兆 | あてはまる? |
---|---|---|
1 | 日報やカルテが“事務”になっている | □YES □NO |
2 | 問診で“感情の共鳴”がない | □YES □NO |
3 | 売上が落ちても分析していない | □YES □NO |
4 | 学びにワクワクがない | □YES □NO |
5 | 予約の声かけが惰性 | □YES □NO |
6 | 発信が機械的 | □YES □NO |
7 | 「また来ますね」が最後の言葉 | □YES □NO |
◆ 3つ以上YESなら
→ “今すぐの再設計”が必要です。
戦うべき相手は「患者の減少」ではなく、**“自分の惰性と思考停止”**です。
■ 最後に
治療院の本当の危機は、「患者が来ないこと」ではない。
院長が、自分の違和感にフタをすることです。
そして、あなたがこの記事をここまで読んでいるという事実。
それ自体が、未来を変える力を持っている証です。
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